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文化とか思想という語は、何か高尚なものを連想させるところがあります。そして、その担い手は知識人や上層階級が想定されがちです。そこには、自分の言葉で自らの記録を残さない人びとが文化や思想に関わることは難しい、との思い込みがあるのではないでしょうか。近代日本の労働者文化を扱う今号の特集は、それがいかに思い込みであるかを明らかにしています。と同時に、文化という語が多義的な内容を持つものであることに注意が払われるべきではないか、との感想を私は持ちました。もちろん、研究史を振り返ってみると、民衆文化・民衆思想という枠組みが提起され、研究対象とされるのはいまに始まったことではありません。それらの研究成果は現在までに豊富に蓄積されており、議論を通じてその分析方法も鍛えられてきました。そこでは、生活という語を立脚点に、人びとの存在形態の意味が解き明かされてきたように思いますが、今号の諸論考を通じて、民衆文化の内容にも多様性があり、生活様式とともに労働様式からも立ち上げて民衆文化を豊かに描く必要があることに改めて気づかされます。民衆文化を考える際にも、一括りにしない視座が求められるということなのでしょう。