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暴力と無縁な歴史は地球上のどの地域においても存在しない、というのは確かなことかもしれません。実際、歴史の教科書は暴力の事実で溢れています。暴力は人間社会にとって、回避することのできない宿命ということになるのでしょうか。私の答えは否です。個人の暴力は人類が生まれたときから存在したかもしれませんが、集団的な暴力は農耕社会の登場とともに発生したというのが通説的な理解でしょう。世界史的に農耕の開始がおおよそ一万年前であったとすれば、人類の登場が数百万年前といわれていますから、戦争のような集団的暴力の登場は人類の歴史全体から見ればつい最近のことになります。そうだとすれば、人間社会にとって、暴力は避けられないものだと考える必要はありません。暴力を人間社会の宿命とは考えず、暴力の歴史性を考えること、すなわち、それぞれの時代・地域の暴力の固有性について考察を深めることが、どうしたら暴力を回避することができるかという道筋を探り当てることに通じるものと私は信じます。
今号の特集は、現代世界における暴力の淵源を、20世紀初頭のアメリカ合衆国における暴力に求めることができるのではないか、との仮説のもとに編まれています。活発な議論を期待します。
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